大型組立
自分で組み立てることの喜び。
小さいころの憧れの仕事に就いている。
直径4メートル、重量数十トン。それが、井上が関わるトンネル掘削機である。これより大きなものも、小さなものもある。しかし、すべてが特注品だ。井上は幼少期から、親の日曜大工に影響を受けて、家のような大きなものを作る大工になりたいと思っていた。建築系の学部に進み、当初は就職も建築業界で考えていたが、施工管理ではなく実際に自分で組み上げることに魅力を感じ、ものづくり企業のなかから関ケ原製作所を選んだ。
トンネル掘削機とは、山や地下などにトンネルを掘る機械のこと。トンネルの掘削方法に合わせて仕様は千差万別で、過酷な作業環境への耐久性も求められる。大きいものを自らの手でつくりたい。その夢が実現した。
試運転で大きな失敗。それは今でも、
よいものづくりのための教訓。
井上の仕事は、何百にも及ぶ部品の組立てをしていくこと。納品日から逆算して、それらがいつ届き、いつ何を組み立てるかを検討。油圧配管を通しながら組立を進め、仮完成したタイミングで本体と台車の油圧の繋ぎこみを行う。
仮完成させたものに油を流し、それが適切なルートを通って流れるか試運転。「油が噴き出たこともありました。その光景は忘れられなくて、絶対に失敗しない、という強い信念につながっています」と井上は言う。
試運転で問題がなければ、発注元による立会いのもと再度、試運転を実施。それをクリアすると、一度解体して、納品現場へ運び、そこで改めて組立を行い、最終確認をする。一度解体する手間があるのは、トンネル掘削機が、あまりに重く大きいためだ。
目の前のものをつくっているのではなく、
人々を支えるものをつくっている幸せ。
発注元が指定した現場で行われる最終確認は、井上にとって最終試験でもある。ここで問題が起きれば、現場での対応はほぼ難しく、また解体して会社に運ぶことになる。当然ながら確実に納品は遅れる。
目の前のことだけを見れば、ある意味ではそれだけのことかもしれないが、トンネル掘削機によってつくられるのは、インフラに関わるものだ。人の生活がかかっている。納品が遅れれば、必ず生活者に迷惑がかかってしまう。
「大きいものをつくることも魅力ですが、つくったものが人々の生活を支えていることが、実はもっと魅力です」と井上。目の前にある大物を見ながらも、人々の豊かな暮らしを見ている彼は、とても幸せそうな顔をしている。
DAILY SCHEDULE
ある1日のスケジュール
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7:40出社・メールチェック
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8:00朝礼
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8:20今日の作業チェック
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9:00組立作業
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11:50昼食
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12:50組立作業の日は午後も継続
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15:00次の組立の打合せ
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18:30退社