特機生産部
生産管理
生産管理という仕事に疑問を持つも、
それを忘れるほどの日々が訪れた。
稲岡が入社して任された仕事は生産管理だった。ものづくりの最前線で開発や設計を担っている、という訳ではない。文字通り「生産」を「管理」する役割だ。最初に配属先を聞いたとき、管理という言葉がピンとこなかった。これは、やりがいのある仕事なのだろうか――。
そんな疑問を抱いた稲岡だったが、配属されて半年ほど経ったある日、疑問を持ったことすら忘れるほど大きな仕事を与えられた。車体モックアップと気密試験機の生産計画の立案から出荷までを任された。早速プロジェクトチームが組まれ、生産管理担当者として営業担当者から受注内容の説明を受ける。
仕様や納品日をもとに、生産部門の担当者と生産工程について話し、購買部門とは材料の仕入れについて調整。外部に依頼する部分に関してはパートナー企業に連絡をとって……という役割を同時並行で行う日々が始まった。
一つのプロジェクトを終えて出たのは、
生産管理は面白いという感情だった。
受注時点では、詳細な仕様は決まっていない。詳細図面がいつまでにできて、それをもとに細かな生産工程を組んで、その部品をつくるために具体的にはいつ材料が必要かを決め、各部門の担当者に詳細情報を伝えるために走り回る。現状の設備では作れない部品があれば設備の形状変更を依頼する。
計画を立ててもスムーズに進むことばかりではない。材料の納品が遅れたり、別の急な依頼が入ったりすれば生産の順番を変更する。品質が満たない恐れのある個所を事前に察知して本格的な生産前に改善案を協議して導き出す。
稲岡に、立ち止まっている暇などなかった。初めて手掛けた製品は、大きなトラブルを起こすことなく納品に至った。やっと振り返る時間がとれた稲岡の心に生まれたのは、「この仕事は面白い」という感情だった。
つねに新しい製品にチャレンジするから、
つねに新しい課題を越えていく必要がある。
稲岡の所属する特機生産部の特機とは、特殊機械の略称である。扱うものはいつも特殊なもので、事業分野も商船や鉄道、大型掘削機など幅広い。
初めて主担当として携わったプロジェクトを終えて、一通りのことができるようになったかに思えた稲岡だったが、次に担当した製品は、まったく異なる分野のものだった。関ケ原製作所は事業分野が広く、特殊機械は、つねに新しいことにチャレンジすることになる。そして新しいチャレンジには、つねに新しい課題がある。
それを大変だととるか、魅力だととるかは、その人次第だ。稲岡は後者、と言い切りたいところだが、そうはいかない。「大変だけど魅力的で楽しい」。これが彼の率直な感想だ。しかし稲岡の顔は、輝いている。
DAILY SCHEDULE
ある1日のスケジュール
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7:40出社
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7:50朝礼
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8:00関わる製品の製造現場を確認
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10:00プロジェクトチームでミーティング
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11:50昼食
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12:50生産スケジュールの作成
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13:30トラブルが発生した場合は現場に急行
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15:00生産や材料調達の進捗確認
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16:30新たなプロジェクトの準備
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18:30退社